SPDIF/同軸スプリッターを作ってみよう! 2021.6.26

同軸 vs 光 ?
 SPDIFの伝送で同軸ケーブルと光(TOSLINK)のどちらがいいかが、だいぶ昔ですが議論されていたような気がします。
そのときは、同軸のほうが優勢だったのですが、その理由についてはあまり定量的にも検証もなされていなかったようです。
たぶん、気分的なものだったのでしょう。それとも、当時のTOSLINKは48kHzまでの低速なものがほとんどということもあり、
そのあたりが嫌気されたのかもしれません(といっても、そこのころは48kHzまでしかありませんでしたが)。
TOSLINKの方が絶縁も確実なことからディジタル機器間の信号伝送にはもってこいと思うのですけれどね。
同軸もパルストランスで絶縁されていますが、安物になるとパルストランスをケチっているものもあるので注意が必要です。

ただ、絶縁性うんぬんというよりか、個人的には同軸は便利です。その理由は

1.適当なケーブルが使える
 ちょっと言い過ぎですが、とりあえずRCAコネクタがついているケーブルがほぼ使えます。ただし、100均の細いケーブルを何本も
 継ぎ足したりすると、さすがに信号がなまるのか192kHzでは信号が途切れたりしましたが、96kHz程度であればケーブルの種類を
 あまり気にする必要はなく接続できてしまいます。
  ケーブルが適当でよいということは、それにカプリングするコネクタも適当なものでよいということです。このため色々と安価に揃えることができます。
 TOSLINKでは光ケーブルもそれなりの値段がしますし、送受信には専用のモジュールが必要です。

2.複数の機器をつなぐことができる。
  本来はダメな使い方とは思いますが、CDプレイヤの同軸出力をDACへパラに3台程度つないでも全然大丈夫です。同軸での終端抵抗は
 75Ωで、3台パラに接続すると25Ωになってドライバーとしてはつらくなります。それで受信電圧も下がるのですが、送信側・受信側の
 どちらにも余裕があるようなので、少々の信号レベルの低下は問題ないようです。SPDIFでの信号強度は500mVppが規格値ですが、
 以前に実験したところ100mVppまで下がっても、大丈夫だった記憶があります。
  分岐も電気的な分配なので、適当な分岐コネクタをつかえばそれで事足ります。光ケーブルで光を分岐するのは結構大変です。というか、
 できるかな〜?

スマートにまとめたい
 同軸を使うと複数台に分岐できるのはいいのですが、分岐にはT型のコネクタやY型のコネクタをつかうのですが、なんせCDPの同軸出力に
 それらが接続されることになるので、かなり端子に負荷がかかります。それになんといっても、そこだけケーブルがごちゃごちゃとなってしまいます。
 以前からその部分をスマートにまとめたいとは思っていたのですが、とりあえず動く状態なのでほったらかしにしていました。それに見えるところでは
 ないですからね。

スプリッタが欲しくなったきっかけは・・・・
 いままでとくに問題はなかったのですが、あるときCDPを動かしたときに同軸のコネクタがはずれてしまいました。というのもY字コネクタを2つつなげて
 SPDIF信号を3分配していたのですが、接続されている3本のケーブルも結構な太さと堅さもあることから、CDPを動かしたときにケーブル側が一緒に
 CDPについてきてくれなくて、ポロリとはずれてしまいました。 一旦はずれると、システムラックを動かしてケーブル樹海の中に手を突っ込んで挿しなおしです。
 これをやるとひと汗かいてしまいます。やっぱり、横着はせずにスマートにまとめたほうがよさそうです。

パルストランス比較!
 同軸でSPDIF信号を送信するときのキーパーツを考えると、色々とあります.一つはパルストランス.そしてもう1つが駆動ロジックです.
でも、一番影響が大きいのはパルストランスでしょう.以前はフェライトリングにコイルを巻いて作ったりしていましたが、
パルストランスとしても既製品のものが結構あります.
最近、秋月電子でも取り扱っているのに気づきました.これってどうなんだろう?


秋月電子からもオーディオ用のパルストランスがでています.

ちょっと、手持ちのパルストランスと比較してみたくなりました. 手元にはすでに村田製作所のパルストランスが2種類あります.
これはどちらも1:1のトランスですが一次インダクタンスが異なるものです.
 
3つのパルストランスを用意しました.ピン番号は違いますが、ピンと機能配置は同じなので、
置き換えて使うことができます.


カタログベースで比較すると下表のようになります. 1次側のインダクタンスがそれぞれすこしずつ異なるようです..
キットでは主にDA102Cを使っています.

巻き線数比 一次側インダクタンス 備考
DA101C
 村田製作所
1:1 1.00 - 2.06 mH
DA102C
 村田製作所
1:1 2.00 - 3.90mH キットでは主にこれをつかっています。
PE-65612NI
 パルスエレクトロニクス
1:1 2.5mH±20% 秋月で売っています。


必要な伝送速度は?

 SPDIFの信号はバイフェーズで送られますが”1”の信号を送るときの周波数は”0”の2倍です。
この”1”を送る周波数は44.1kHzのときは約5.6MHzです。192kHzだと24.576MHzです。パルストランスでは
この周波数が安定的に、というか識別できるように送信される必要があります。実績として今までつかっているDA102CやDA101Cは
大丈夫なことが分かっているのですが、PE-65612Niは大丈夫かな?スペックとしては他と変わらないのですが、一度確認しておいたほうがよさそうです。
ということで、簡単な回路で伝送時の波形を調べてみました。


こんな回路でパルストランスの出側信号を確認してみました.


ブレッドボードで確認です.

結果は微妙に違う?

3つのパルストランスで、LOAD端(75Ω)の波形を観察です. 3つともほぼ同じですが、
ちょっと微妙に違う感じでしょうか.一番一次側インダクタンスの大きなDA102Cのリンギングが若干大きい感じです.
まあ50歩100歩かなあ〜. でも、あえていえば秋月のパルストランスが一番綺麗な波形のような気もします.

LOAD端電圧波形
DA101C
 村田製作所
DA102C
 村田製作所
PE-65612NI
 パルスエレクトロニクス

ちなみに、すこし周波数を下げて測定しましたがリンギングは結構でています.
まあ、ブレッドボードでの測定なのでいたしかたないところです.


すこし周波数を落としてみました(10MHz).
最初のリンギングが25MHzだと目立つようですが、
ブレッドボードなので仕方ありません.


回路図は

どのパルストランスをつかってもよさそうな気もするので、ここいらで回路図を書いてみましょう.. 仕様としては3分配のスプリッターとしました.
ドライブ段は74AC04のインバータを3個並列にしてみました.
 ちなみに、OUT2だけ位相が反対になるようにしていますが、これは気が向いたらパルストランスをBTLドライブしてやろうかとちょっと茶目っ気があったからです.
でも、たぶんしないだろうな〜.
 電源回路は5Vにしていますが、3.3Vでもおそらく大丈夫でしょう.3.3Vに変更したらドライバの74AC04を74LVC04あたりに取り替えてみるのも面白そうです.
まあ、このあたりはおいおい遊んでみましょう.


試作(?)基板もできました.

HDMI基板とあわせてつくりました.基板の面付け時の隙間のスペースを活用したので、いつものSTD-Hサイズよりもさらに小さいです.
サイズは約78×43mmです.


試作(?)基板ができました.

めずらしく、この基板には電源のパイロットランプのチップLEDも取り付けられるようにしています.
サイズは2012なのですが、チップLEDってどうやってアノードとカソードを見分けるのだろう?と思っていたら、
裏面に書いてあるのですね.


チップLEDの裏面にAKの識別ができるようになっています.
三角形の底辺側がアノード、頂点側がカソードです.

完成!

不要な部品が色々とありますので、それらを除いて完成です.電源部の電解コンデンサは裏面にチップコンデンサを
とりつけるパターンをパラに設けているのでそちらに実装しました.できるだけ小さく作りたいと思っています.

完成写真です(部品面です). 電源部の電解コンデンサは裏面にとりつけました.
節操なく(?)、パルストランスはすべて異なる種類をとりつけました.聞き比べです.


裏面の実装です.



裏面にはSMDの電解コンデンサを取り付けるパターンを設けています.

動かしてみましょう!

早速通電です.このくらいの小さい規模の基板なら、わりと躊躇なく電源を入れられます.
小さい規模というより、高価な素子が乗っていないということですね.1万円以上するDAC素子なんかが
乗っていたら、初電源投入なんてビクビクです(笑.
 5Vレギュレータは78M05をつかっているので、電源電圧は7.5Vにしました.
電源投入したらLEDが紫色に光りました. 発光色はじめて知りました(笑.
なお、消費電流は無入力時で50mA程度でした.,信号入力時は約35mAです.
 CMOSロジックだけなのに想像より大きいです.
おそらく初段のアンバッファー(74AHCU04)をアナログアンプのようにつかっているので大きいのでしょう.

動作確認と試聴準備です.消費電流は約35〜50mAでした.


念のためレベル確認です.約800mVppですね.


どのパルストランスがいいかな?

今回は、パルストランス3個はすべて違う銘柄にしてみました.どれが一番音がいいかの聞き比べるです.

結果は------全然わからないです(笑. どれも同じに聞こえます.
でも、耳が良ければ違って聞こえるのかな〜????

とりあえずは、今日はここまでにしておきましょう.

製作マニュアル作成しました。 2021.7.6

手抜きバージョンです。 → SPDIF_SPLITTER_Manual.pdf

頒布用の基板もできました。 2021.7.8


いつもの金フラッシュの表面処理です。

I/Oをとりつけました 2021.7.25

システムに組むためにRCAコネクタをとりつけました。最初は小さいケースに入れようかとおもいましたが、
あいにく適したサイズのケースが見あたらなかったので、I/O基板(STDサイズ)を活用してボード上に配置しました。
I/O基板としてはすこし勿体ない使い方ですが、RCAコネクタやDCジャックが取り付けられるので作成が簡単です。
なお、I/O基板はSTDサイズでもすこし大きいので、すこしカットしました。
 なお、電源はDC5Vとしたために、3端子レギュレータはIN-OUT間をショートさせています。

こんな感じでI/Oコネクタを取り付けて完成です。


裏面はアクリル板でカバーしています。

(おしまい)