ちょっとTea Time!? LM3886は汎用DCパワーアンプに使えるか? 2023.4.25

そういえばDCアンプって大昔に流行った気がします。今は、てんで聞きませんね〜。
まあ、20Hzですらまともに再生できるスピーカがほとんどないことを考えると、あまり意味がないということなのでしょう。
それよりも、どちらかといえばハイレゾとか称して、数10kHzなんて聞こえもしない帯域の再生をPRしているものの方が
多いような気がします。 それならば、聞こえなくても体で感じられる重低音の再生の方を重視してほしいのだけどな〜。

とはいえDCアンプを名乗ることができるアンプは、それだけ安定性にも長けたということにもなりますし、
カップリングコンデンサを排除することの意味もあるのかもしれません。

で、ここでのDCアンプとは、いわゆるオーディオ用ではなくて、汎用パワーアンプでして、そこにLM3886が使えそうか?
ということの検討です。汎用パワーアンプがあれば、色々とお遊びに使えます。

例えば、電源の替わりにもなります。+5Vに±100mVのリップルが入ったような電圧を発生させることができるので、
電圧レギュレータの評価用にも使えるでしょう。また、DCモータの駆動源としてもいいでしょう。正負電圧出力が出せるので
正逆回転が自由に操れます。また高周波数も当然つかえるでしょうから、コイルに電流を流して渦電流をつかったお遊びも
できます。このときDCオフセットがかけられれば、磁性体のヒステリシスの非対称な部分での動作も可能です。
汎用のDCパワーアンプが何個かあれば、色々と遊べます。

簡単にDCパワーアンプとして使えそうな手元の素材をみてみると、LM3886がありました。
今回はLM3886をDCアンプとして動かしてみようというのが、目的です。

回路は簡単
 回路はDCアンプなので極めて簡単です。LM3886をつかったパワーアンプ基板をつかって、
DCカットに関するコンデンサをすべて削除です。ついでに、出力の位相補償回路も削除してやります。
これで、裸の特性としてどうなるかをチェックです。

不要な部分はすべてジャンパー接続です。


LM3886のパワーアンプ基板をつかって組み立てです。

動かしてみてみましょう

負荷もつなげることもあるので、LM3886を大き目の放熱板に固定しておきます。



1.DCオフセットはどのくらい?
 回路の帰還定数は20kΩと1kΩなので、ゲインは21倍です。
入力を短絡させた場合のオフセット電圧を調べると15mV程度です。
そして入力を開放させた場合のオフセット電圧は約90mVです。
その差は約75mVですが、この原因は入力抵抗(47kΩ)に流れるアンプから漏れ出る電流
により発生する電圧です。漏れ電流を計算すると
 0.075(V)/21(倍)/47000(Ω)=7.6E-8(A)=0.076(uA)
です。データシートをみるとIb(Input Bias Current)は標準で0.2uAですから、
データシート通りですね(低めでよろしい!)。
でも、精密なDCアンプにするためには、手前にOPアンプでも
挿入して、調整できるようにしておく必要があるでしょう。


入力を短絡させた場合のオフセット電圧は約15mVでした。


入力を開放したときのオフセット電圧は約90mVくらいです。

2.最大出力電圧は?

電源電圧は24Vの実験用電源をつかっているので、最大出力は20V程度でしょう。
でも、案外高い電圧まで出るようです。無負荷では実測では23Vくらいまで出ました。
でも、それを超えると、一気に波形が歪みます。単に、出力がクリップするという感では
ないようです。ただ、24V電源で20Vもでれば十分でしょう。


24V電源ですが、無負荷時には出力は22Vくらいまで出ていそうです。


ただ、入力をあげると、とたんに波形は壊れてしまいます。
おそらく内部でのなにかの保護回路が動くのでしょう。


3.無負荷での周波数特性は?

無負荷の状態で、振幅(20V)のときに、どのくらいの周波数まで再生できるかを調べてみました。
結果は140kHzまでは普通に正弦波が再生できましたが、160kHzにあげると、とたんに波形が歪みだしました。
周波数特性はあまり高くないようです。といっても、この帯域はオーディオ用としては関係ありませんが・・・。


無負荷、振幅20Vでは140kHzでも波形も綺麗です。
(上(ch1):出力、下(ch2):入力)


無負荷、振幅20Vでは160kHzを超えると、とたんに波形が歪みました。
(上(ch1):出力、下(ch2):入力)


3.負荷時での周波数特性は?

ここいらで負荷を接続です。負荷には5Ωの抵抗をつかいました。
振幅20Vでの結果は100kHzまでは綺麗に増幅できましたが、それを超えて
110kHzになるととたんに波形が歪みました。これはなんらか内部の保護回路が
うごくのでしょうね。


5Ω負荷、振幅20Vでは100kHzまでは綺麗に再生できました。
(上(ch1):出力、下(ch2):入力)


5Ω負荷、振幅20Vでは110kHzを超えると歪みました。
(上(ch1):出力、下(ch2):入力)

3.ちょっと振幅を下げたときの負荷時の周波数特性は?
20V振幅では、再生周波数は100kHz程度でしたが、もうすこし出力電圧を下げてみましょう。
ということで、振幅を7.5V程度にしてみました。すると、330kHzまでは綺麗に再生できました。
それ以上になると、なにやら発振気味になるようです。

5Ω負荷、振幅7.5Vでは330kHzでは綺麗に再生できました。
(上(ch1):出力、下(ch2):入力)



5Ω負荷、振幅7.5Vでは330kHzを超えると波形が発振気味です。
(上(ch1):出力、下(ch2):入力)

ここまでをまとめると

1)オフセット電圧はほぼデータシート通り。精密なDCアンプにするには前段にOPアンプをつかって低インピーダンス
 駆動&オフセット調整機能があったほうがいい。
2)大振幅で使う場合は、100kHzが限界。振幅を絞れば300kHz程度も増幅できる。これは波形をみて確認必要。

といった感じでしょう。
+
お遊びでモータを繋いでみる

試しに出力に模型用のモータを接続です。有名なマブチの540モータです。
1Hz正弦波で駆動すると、頻繁に正転、逆転を繰り返します(←当たり前ですが。
ただ、出力電圧を観測すると、反転時に盛大な逆起電力が発生しますので、
それを打ち消すためにアンプの出力が完全に飽和してしまっています。
これって、アンプにはストレスだろうなあ〜。モータを接続する場合は、
クランプダイオードみたいなものを入れておいた方が良さそうです。

昔の模型につかっていたモータを動かしてみました。1Hzの正弦波で駆動です。


正逆反転時に逆起電力が盛大に発生している様子がわかります。
これって、アンプにとってはストレスだろうな〜。


お遊びで5V3端子レギュレータを試してみましょう

今度は3端子レギュレータで遊んでみます。入力電圧を10Vとして、それに2V振幅で正弦波を重畳させます。
そのときの出力電圧のリップルをオシロで観察です。
 周波数が高くなると、リップル電圧が増大する様子がよくわかります。
スイッチング電源を元電源にする場合にはスパイクノイズが取り切れないわけですね。

今度は3端子レギュレータを繋いでみました。


1kHzではまだオシロでは出力リップはよくわかりません。
上:出力リップル(20mV/div)、下:入力リップル(2V/div)


50kHzでは結構なリップルがでています。大体で振幅10mV程度
だから、除去率は-46dBですね。

上:出力リップル(20mV/div)、下:入力リップル(2V/div)



90kHzになるとさらにリップルが大きくなります。大体で振幅40mV程度
だから、除去率は-34dBです。低いなあ〜。

上:出力リップル(20mV/div)、下:入力リップル(2V/div)

結論
LM3886でも色々と遊べそうなので、ちゃんとしたDCアンプにして1つ用意しておきたいものです。


(おしまい)

折角なので 2023.5.28

手元にLM3886もあることなので、DCアンプとしてつかえるように小型の基板をつくってみましょう。
なにかと便利につかえるでしょう。


とても小さい基板ですが、オフセット調整とゲイン調整用のVRを搭載しています。

基板ができてきました 2023.6.7

すこし納品が遅れましたが、基板ができてきました。


基板ができてきました。結構小さいです。

まずは下記の回路定数で組み立てましょう.。設定ゲインは10倍です。入力インピーダンスは汎用アンプなのでR1=1MΩにしています。
オーディオ用なら47kΩでしょう。入力インピーダンスが高いのでOPアンプにはJFET入力のOPA2227(DUAL)をつかっています。
オーディオ用ならOPA2134あたりでもいいでしょう。
 なお、OPアンプの電源には7815,7915をつかいましたが、必要な電流はOPアンプ1個分ですから78L15,79L15でもいいかもです。
(単に手元に7815,7915があったのでつかっただけです)。


回路図例です。ゲインは10倍にしています。汎用アンプなので入力終端抵抗(R1)は1MΩと高くしています。


早速実装してみました。OPアンプはDUALのOPA2227を搭載しています。

なお、オペアンプはDUALタイプとSINGLEタイプのどちらもつかえるパターンにしています。
OPアンプ背面のジャンパーで設定です。


OPアンプはシングルとDUALのどちらも実装できるようにしています。
D側をジャンパーすればDUAL-OPアンプ、S側をジャン―アすればSINGLE-OPアンプです。



DUAL-OPアンプの設定です。半田の跡がすこし汚いなあ〜。

難なく動作確認です。


問題なく動作することを確認です。


ちなみに

DUAL−OPアンプを使用すると、一回路があまってしまいます。放置でもかまいませんが、
安定した状態で放置したほうが精神的にもいいので、下記のような状態になるようにしておいたほうがいいかもです。

余る回路はこのような状態にしておくのが吉です。


DUAL設定の場合には、未使用の回路はこうやっておくほうがいいかもしれません。

オフセットとゲイン調整

いまのうちにオフセットとゲインを調整しておきましょう。

オフセット調整は入力を短絡してVR2で調整です。VR2を最小〜最大で動かした場合には
出力電圧は約-200mV〜150mVで変化しました。もうちょっと調整範囲を狭めてもいけそうです。
その場合はR5をもっと大きな値にすればいいでしょう(100k→470k程度でしょう)。

ゲイン調整は入力に適当な電位を加えて調整です。実験用電源で約1V程度の電圧を加えて、
出力がちょうど10倍になるように調整です。DCアンプなので入力は直流でもOKです。

反転増幅にしてみましょう!

BTLにする場合には片側は反転増幅器にする必要がありますが、
DUALーOPアンプをつかった場合は、あまった回路をつかって簡単に反転増幅にすることも可能です。
あとづけ部品として1kΩ程度の抵抗が3つは必要です。なお反転増幅にする場合はR4は実装しません。


反転増幅にする場合の改造例です。

下記のように部品と配線をとりつけます。抵抗は小さいほうが扱いやすいでしょう。
チップ部品があると便利です。なお、抵抗値の誤差は気にする必要はありません。
あとで、オフセットおよびゲインの調整すればOKです。

反転増幅にする場合の改造方法(R4は実装しません)


DUAL-OPアンプの使用の場合に、出力を反転させることもできます。こうすれば2枚使ってBTLで動かすことも可能です。


反転増幅での動作確認です(上:出力1CH、下:入力2CH)


まあ、こんな感じでLM3886をつかった汎用アンプ(DC動作)ができました。

6ch分を作ろう! 2023.8.15

汎用的に使えるようにしておきたいので、複数チャンネル分を製作です。
6chあれば、なにかと使えるでしょう。オーディオ用途なら3WAYのマルチにも対応できます。

部品は手持ちのものをつかったので、3端子レギュレータは12Vのものです。
半固定抵抗は1回転のものと多回転のものが混在していますが、どちらもデジットで一袋(50個あるいは100個)が500〜1000円程度で
売られていたものを使いました。多回転のものは村田製です。ただ、調整ネジが横についているので、つかえるシチュエーションが限られます。
OPアンプはOPA134です。

6ch分を製作しました。製作したら、オフセットとゲインを調整です。ゲインは20倍設定です。オフセットは1mVに調整です。

実装については1枚の放熱板に取り付けです。
長細い放熱板なので、最大8ch分程度は取り付けられそうなのでが、ケースに収まらないので放熱板はカット予定です。
下の写真のように並べて配置することで、電源は1本の銅線を貫通させて配線できるので簡単です。

6ch分のアンプは長細い放熱板に取りつけましょう。


ケースはこれにしましょう。塗装もせずに屋外に放置しておいたので、錆がでています。
また、グラインダーをかけなくっちゃ!


電源は内蔵できればいいのですが、正負電源が必要で24V程度のスイッチング電源の小型なものを探しましたが(安価なやつで)、
なさそうなので、外部供給にしましょう。 外部供給はバナナプラグ等でいいのですが、極性を間違えても大丈夫なように、
入力のところにダイオードを入れておけばいいでしょう。ただ、電圧降下が0.6V程度生じてしまいますが、保険代みたいなものです。

入出力端子はどちらも着脱が容易なようにBNCにしておきましょう。BNCでも電流容量は3A程度は扱えます。
ただ、BNCでも隣との間隔は20mmは必要なので、すべて後パネルに設置するのは難しそうなので、
裏面に4ch分、フロントに2ch分を配置することとしましょう。

涼しくなってきたので 2023.10.3

作業再開です。放熱板の切断や鋼材の切断、溶接などは外でしかできません。
そのため暑い間はパスしていました。
でも、涼しくなったとはいえ、蚊がいるので虫よけスプレーをして作業です。


フレームに放熱板を取りつける板を取り付けです。あわせてフレームも塗装です。


放熱板はこのような感じで取りつきます。


放熱板に穴をあけてアンプモジュールを固定です。当初は6個搭載予定でしたが、
サイズ的にきちきちになりそうなので余裕をみて5個にしました。


パネル加工、そして完成! 2023.10.4

パネルはフロントが3mm厚、バックが2mm厚のアルミです。
CNCで加工したのち、バリがでるのでグラインダで削り落とします。
その後はヘアライン加工をする予定でしたが、面倒なのでやめました。
グラインダの削り後でもそれなりに雰囲気もでていることもありますし←単なる言い訳。

パネルができたら、端子を取りつけてテプラを貼って、あとは配線するだけです。
配線も単なる電源の接続と入出力配線だけですから、それほど時間はかかりません。

配線が終わったら、結束バンドでしばりつけて完成です。


切削後のバリ取りはプラスチック製の研磨用の工具でグラインダを使います。


フロントパネルです。4組の入出力BNCをとりつけています。中央上のLEDはパイロットランプです。


バックパネルです。電源入力のジョンソン端子と1組の入出力BNCをとりつけています。


このような感じで配線をおこないました。


こちらは裏側です。どちらが表か裏かわからないフレーム(ケース)です。


電源入力部には1000uF/50Vのコンデンサを追加しておきました。

まとめ

LM3886をつかって、DCレベルで使うことを想定したアンプを製作しました。
5ch分ありますが、ICを使うことでかなり小型にできました。
このアンプは、これから色々な実験で活用できるでしょう.

(おしまい)