AK557XのADCを調べてみる!の巻き 2023.2.5
(ことの発端)
一つのBBSへの投稿から、ちょっと調べてみようという気が起きてきました。
(中略)
今のADC専用基板のラインアップはADC1808のみ
ところで今のADCのラインアップはどうなっているのかな?と思って改めてHPを見返してみると、
ADC専用のものはADC1808(一応ADC1808-miniもあるが)1機種のみのようです。
これはTI社のPCM1808をつかったもので、24Bit96kHzでのサンプルリングです。
なにより、PCM1808が秋月で180円で買えるのお財布に優しいです。
ADC1808が現在唯一のADC専用基板になっています。
変換素子はPCM1808で秋月で180円で購入できます。
本来はADC5397があって、これがスペック的(32Bit768kHz)にも抜群にいいのですが、
なんせADCの要のAK5397がありません。 基板をリリースした翌年に旭化成の工場が
焼失してしまって、生産が止まってそのままディスコンになってしまいました。
ほぼディスコン状態のADC5397です。基板はあるんだけど素子が無い(泣。
もうAK5397は入手は不可能な状態です。
その他のADCを内蔵した基板は
DIF4245はシーラスロジックのCS4245をつかったADC/DAC基板で、これは
24Bit192kHzのサンプリング仕様です。ADC1808よりちょっとだけスペックが高いです。
最近ではRenewSRC4137もADCの機能があります。これはDAIであるPCM9211に24Bit96kHzの
ADCを内蔵しているためです。
まあ、96kHz24Bitのスペックがあれば通常使う分には十分のような気もしますが、
やっぱりオーディオって気は心でもあるので(なんのこっちゃ)、あるのなら最高のスペックの
ものを使ってみたいですね。
DIF4245です。24Bit192kHzのADCを内蔵しています。
Renew SRC4137です。基本機能はASRCですが、DAIにADCを内蔵しています(24Bit96kHz)
AKMのADCを調べてみる!
そこで、旭化成に絞っていますが現状のADCのラインアップをみてみました。 中でもスペックが高いのはAK5572,AK5574,AK5578です。
32Bit768kHzのサンプリングでS/Nも121dBあります。ちなみに、型番の末尾の数字はチャンネル数でAK5572が2ch、AK5574が4ch、そして
AK5578が8chです。 まあ、8chのADCなんて使わないだろうな〜。
で、下表をみていて自動車用途のADCがかなりあります。 これってどういった用途なんだろう?
まあ、AMやFMなんかはアナログ信号だから、それのためにADCして、あとはディジタルで音質調整をするということなのかな?
いづれにしても、オーディオ用途のなかでもステレオに限るなら2chのAK5572でいいような気がします。
旭化成のADCのラインアップです。 AK5572,5574,5578あたりがスペックが高いです。 使うなら2chのAK5572でしょうね。
AK5572とAK5574の違いは?
使用するなら、2chのAK5572でいいのでしょう。 DEGIKEYでも@1400円程度と比較的安価です。
でも、AK5574とパッケージが同じところをみると、ひょっとしてAK5572とAK5574のピン配置は似ているかもしれません。
一度、並べて比較してみましょう。
で、比較してみるとAK5572とAK5574はほぼ同じです。 AK5572のテストピンになっているところがAK5574での電源入力とアナログ入力になっています。
このため、AK5572とAK5572の共用パターンができそうです。
ただ、フロントエンドのアナログ部分が結構面積をとりそうなので、作るなら2ch分のみだけと、AK5574を使えば4chにも拡張可能ということになるでしょう。
AK5572 | AK5574 (AK5572のテストピンが電源と入力に割り当てられていて、その他は同じです) |
![]() |
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めんどうな形状だな〜
まずはAK5572あるいはAK5574あたりを試してみたくなりましたが、パッケージがHVQFN48です。
また面倒な形状だなあ〜〜、変換基板あるかな?変換基板がなければ、直接基板の設計になっちゃいますが、
それはそれでリスクがかなり高いです。
パッケージはHVQFN48です。外形7mm四方のパッケージです。変換基板があるだろうか?
秋月のQFN48基板は・・・×
秋月の変換基板を調べてみました。ちょうど0.5mmピッチのQFN48の変換基板があるようです。
EXPOSED PADには対応していませんが、中央に穴をあければ大丈夫です。
でも、基板をみてすこし対向するパターン間の間隔が広いような〜〜?
計ってみると7.8mmあります。これじゃあ7mmのHVQFNでは届きません。
秋月にQFN48の変換基板がありました。
対向するパターン間の距離が7.8mmと大きいのでHVQFN48では届きません。
これはリードピンのあるパッケージ用でしょう。
手元にあるかな?・・・・〇!!
秋月の変換基板はだめのようですが、変換基板については色々と買ったりしているので
部品箱に転がっているかもしれません。 で、掘り出してみると、使えそうなのがありました。
確か、AMAZONで購入した中華製のもののはずですが、両面あってQFN44とQFN48のどちらも
使えるものです。
ポイントとなる対向するピン間隔を調べると6mmです。これなら7mm四方のHVQFNが取り付けられます。
さらに、EXPOSED PADのパターンもついているので好適です。
これで、デバイス(AK5572)を買っても動かせそうです。
変換基板がなければ、部品箱の肥やしになってしまいますからね。
こんな変換基板を部品箱で見つけました。
対向するピン間隔が6mmなので7mm四方のHVQFNなら取り付けられそうです。
変換基板もあったことなので、折をみてチップを買ってみましょう。
まずはとりかかり中のパワーアンプが待っています(笑。
それでもブツはやってくる 2023.2.11
DIGIKEYでの買い物ついでも1個だけAK5572を買ってみました.
やっぱり小さいな〜.
裏面はこんな感じ.
このままだと無くしそうなので、とりあえず変換基板に取り付けておきましょう.
ちょっとHOW TOちっくに書いてみました. 私なりのやり方です.
1)まずは変換基板にフラクスを塗ってすこし乾かします. 粘度がでてICが動きにくくなります.
2)ICを置いて位置合わせです.4方向からルーペで確認して、ずれがないように微調整です.
ここがもっとも大切です. ここで手を抜けば取り返しがつきません.
3)1,2箇所を半田付け. このときコテ先や半田がICに触れないように、 ICは軽いので簡単に
動いてしまいます. 触らないようにして半田を多目でもよいのでパターン端から流し込むような形で
1,2箇所接続します.
4)対角で2箇所半田付けできたら、あとはICは動きませんから、周囲を半田付けです.
半田付けが終わったら、まずはルーペで半田がちゃんとついているか確認です. これ大事です.
ブリッジしている箇所は再度フラクスを塗ってコテを当てれば、表面張力で半田ブリッジが解消します.
5)汚くなったフラクスをアルコールをしみこませた綿棒で清掃してれば、変換基板への取り付け完了です.
しばらくアンプ作りに注力していたこともあり、ひさしぶりに作業再開です。
ハードウエアモードで動かしましょう! 2023.3.23
ADCはインピーダンスの高い状態での入力信号を扱うことから、マイコンはない方がいいのと、
一番お気楽に動かすことができるのでハードウエアモードで動かします。
というか、DAC素子なんかはマイコン使用を前提で動かこすことが当たり前になっていますが、
ADCについてはマイコンレスで動くような設定がかならずあるような気がします。
メーカとしても、ベストな性能を出すためにはマイコンは避けたいという思惑もあるのでしょう。
さて、ハードウエアモード(パラレルモード)で動かすためのモージュールを作っていきましょう。
まずは回路図を描いておきます。ハードウエアモードなのでジャンパー設定が沢山あります。
なお、コア電圧の1.8VについてはAK5572内部のLDOを使うことにします。
回路図の作成が終われば、おもむろに作成です。
できるだけ半田付けを少なくして、楽しようとラッピングを使いました。
が、実際にはポリウレタン被覆銅線をつかった方が早かったかもしれません。
というのもラッピングだと、1回の配線で2ピン間の配線しかできませんが、
ポリウレタン被覆銅線をつかえば、隣接するピンなら一気に複数が配線できますから。
まあ、途中で変更するのもなんなんで、今回は再最後までラッピングで配線しましょう。
ハードウエアモードで動かすためのAK5572のモジュール部の回路図です。
ラッピングで配線です。ジャンパーポストにはラベルを付けておきました。
動かしてみましょう!
ADCの動作確認のために、変換出力をDACに繋ぐ必要があります。
そこでDACには手元にあったDAC4398をつかいました。
ADCのクロックについては、このテストの為に作成したSi5351Aをつかったオーディオ用のクロック発振器をつかいました。
テストの状況です。
最初はPCMモード
まずはPCMモードでテストです。
変換状況をみるために、1kHzと10kHzの三角波を入力して、DACからの出力を観察です。
そしてサンプル周波数を変化させたときの波形の変化をみてみました。
結果は想像通りです。
1kHz程度の低い周波数だと、サンプル周波数の違いはほとんどわかりませんが、
10kHz程度になると、サンプル周波数が高いほど波形の再現性が向上することがわかります。
サンプル速度 | 設定 | 1kHz三角波 上:DAC出力(ADC変換後) 下:ADC入力 |
10kHz三角波 上:DAC出力(ADC変換後) 下:ADC入力 |
NORMAL SPEED 48kHz (MCK=24.576MHZ) |
![]() |
![]() |
![]() DAC変換後の出力が鈍ってしまって、正弦波のようになっています。 |
DOUBLE SPEED 96kHz (MCK=24.576MHZ) |
![]() |
![]() |
![]() DAC変換後の出力はすこしは三角波に近くなりました。 |
QUAD SPEED 192kHz (MCK=24.576MHZ) |
![]() |
![]() |
![]() DAC変換後の出力の再現性がかなりあがりました。 |
次はDSDで
DSDの設定はDPピンを”H”レベルに変更です.
PCMではフォーマット選択ピンであるDIF0,1がDSDではDSDSEL0,1に変ってサンプル周波数の変更になります.
DCKS(PCMではHPFE)ピンでMSK周波数を512FSあるいは768FSの選択が可能ですが、一般には512FSでしょうから”L”に設定です.
で、DSD64(2.8224MHz)、DSD128(5.6448MHz)、DSD256(11.2896MHz)で変更してみました.
最初は10kHzの三角波で観察してみました.DSD64に比べるとDSD256の方が角の部分がよりシャープになったような感じですが、
差はあまり感じないです. ひょっとして周波数が低いのかもしれません.
追加で20kHz三角波で比べてみました.DSD64とDSD128の違いは明確なのですが、DSD128とDSD256の違いはよくわからなかったです.
もうちょっと周波数の高いところだと違うのかもしれませんが、このあたりの違いがでる周波数成分なんて可聴域をはるかに超えていますから、
どうでもいいような気もしてきました(単に面倒くさい?
FS MODE | 設定 | 10kHz三角波 上:DAC出力(ADC変換後) 下:ADC入力 |
20kHz三角波 上:DAC出力(ADC変換後) 下:ADC入力 |
64FS DSD64 (BCK=2.8224MHz) |
![]() |
![]() |
![]() |
128FS DSD128 (BCK=5.6448MHz) |
![]() |
![]() DSD64に比べるとすこし波形が先鋭になりました. |
![]() DSD64とは明らかに違います. |
256FS DSD256 (BCK=11.2896MHz) |
![]() |
![]() DSD128と変りないのかな? |
![]() DSD64に比べると波形が先鋭になりました. |
さて、これでPCMとDSDで動作が確認できました.
いやらしいなあ〜
いつもはDACの入力は10PinでPCMとDSDは共用にしています. これができるのは下表の様に、ICのピンが割り当ててあるからです.
多くのDACの入力ピン | PCM入力時 | DSD入力時 | |
MCK | MCK | MCK | |
BCK | BCK | BCK | |
LRCK/DSD-R | LRCK | DSD-R | 多くのDACのLRCK入力はDSDD-Rと同じになっている |
DATA/DSD-L | DATA | DSD-L | 多くのDACのDATA入力はDSDD-Lと同じになっている |
しかしながら、AK5572の出力ピンはMCKとBCKピンはPCMとDSDと共通ですが、
その他の割り当てが、少々異なっています..
AK5572の出力ピン | PCM出力時 | DSD出力時 | |
MCK | MCK | MCK | |
BCK | BCK | BCK | |
LRCK/DSDOL1 | LRCK | DSD-L | |
DATA | DATA | ||
DSDOR1 | (INPUT) | DSD-R |
DACとADCのピンを一致させようとしたら.追加でロジックを組まないといけななあ〜.
PCM出力とDSD出力ポートを個別にすればいいのだけど、なんとなくスマートではありません.
というか、出力ポートを統一するだけなら簡単ですが、DSDとPCMを切り替えると他のジャンパーピンの
設定も同時に変更しないといけないといけません. これらもロジックで切り替えるかな?
ADCなんて設定を変えることってほとんどないから、都度ジャンパーピンでの設定にしちゃうかな?
そうすると部品も少なくスッキリするするしなあ〜.
さてさて、どうしたものか?
#あすからの出張のときにのんびり考えましょう!と思ったら、出張帰ったら資料(原稿)の締め切りが目の前だあ〜
(つづく)